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【ヒンドゥー教】母なるガンガーの神話 ~ガンジス川はどのようにしてできたのか?~

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【ヒンドゥー教】母なるガンガーの神話 ~ガンジス川はどのようにしてできたのか?~

ナマステ(ᐢ人ᐢ) インド在住のKome(@chankomeppy)です。

ヒンドゥー教徒にとって、ガンジス川は最も神聖な川であり、川そのものが神格化されて「母なるガンガー」として敬われている。

今回は、ガンジス川の神話についてまとめた。

この記事はこんな人にオススメ

  1. インド旅行者・在住者
  2. ヒンドゥー教の神様や神話に興味がある人

バラナシやリシケシに行く前に知っておきたい豆知識

はじめに:ガンジス川(ガンガー)とは?

ガンジス川(Ganges River)とは英語名で、サンスクリット語やヒンドゥー語ではGanga(ガンガー)と呼ぶ。

冒頭に書いた通り、ガンジス川そのものが神格化され、女神「Gangamataji(ガンガーマタジ)」=「母なるガンガー」として崇められてる。

まず、ガンジス川の地理と、ガンジス川流域の歴史について簡単にふれておく。

ガンジス川が流れる地域

ガンジス川は、ヒマラヤ山脈からインド北東部にかけて流れる全長2525kmの大河だ。

北海道(札幌)から沖縄(那覇)までの直線距離が2500km程度なので、ガンジス川がどれだけ大きいかは容易に想像できる。


ヒマラヤ山脈の南麓ガンゴートリー氷河から流れ出た雪解け水を源流とし、バギーラティー川(紺色部分)アラクナンダー川(紫色部分)が合流した地点より下流側がガンジス川(青色部分)と呼ばれている。下流域では多くの分流をつくり、代表的なものとしては、バングラデシュに流れるパドマ川(海色部分)とコルカタ付近を流れるフーグリー川(緑色部分)がある。

ガンジス川沿いにはいくつかの聖地があり、聖地のガート(沐浴場)での沐浴はご利益があるとして、インド各地から多くの巡礼者が訪れる。

旅行者がよく訪れる聖地として、ガンジス川上流部にあるリシケシハリドワール、中流部にあるバラナシが有名だ。

リシケシのガンジス川
リシケシのガンジス川(2017年4月撮影)

バラナシのガンジス川
バラナシのガンジス川(2011年3月撮影)

ガンジス川周辺の歴史

古代インドの国々は、ガンジス川流域で発展した。

紀元前1500年頃にインド北西部に侵入した遊牧民族のアーリヤ人は、この地にもともと住んでいたドラヴィダ人を征服し、その過程でヒンドゥー教の前身となるバラモン教が成立した。アーリヤ人は原住民に稲作の技術を学び半農半牧の生活に移行すると、徐々にその居住地を拡大していき、紀元前500年頃にはガンジス川中流域にまで進出。豊かな農業と牧畜による生産能力に支えられ経済・文化は発達し、ガンジス川流域にはマガダ国やコーサラ国などの国々が成立した。

古代インドの発展はガンジス川なしでは成立せず、ガンジス川の恵みによって発展したとも言える。この時代、自然によってもたらされた様々な現象はすべて神の力によるものだとされ、ガンジス川の恵みも「神の力」と信じられ、崇拝の対象となった

4世紀から6世紀にかけてガンジス川流域を統一したグプタ朝では、バラモン教の教えに土着信仰が融合し、ヒンドゥー教が成立。シヴァ神やヴィシュヌ神といった新しい神様が台頭し、現在のヒンドゥー教が体系化された。

そこで、自然崇拝の対象であったガンジス川と、ヒンドゥー教の神様が融合し、ガンジス川の神話が生まれた。ガンジス川の神話は、グプタ朝時代に成立したとされる「マハーバーラタ」の一説である。

ガンガー(ガンジス川)の神話

サガラ王が盛大な儀式を行う。

ガンガーの神話①
豪華な馬を引き連れるサガラ王を天界から眺めるインドラ神(出典:sagarworld.com)

昔々、インドのアヨーディヤーという国にサガラという王がいた。

サガラ王は、アシュヴァメーダ祭という王者の証である盛大な儀式を行い、豪華な装飾品を身に着けた馬を引き連れて、神々に対する覇権を見せつけることにした。

天界の王であるインドラ神はサガラ王に嫉妬した。

サガラ王に嫉妬したインドラ神が馬を誘拐する。

ガンガーの神話②
馬を連れ去るインドラ神(出典:sagarworld.com)

サガラ王に嫉妬したインドラ神は、儀式に使われる馬を誘拐し、長年瞑想に励んでいた聖なる賢者・仙人(リシ)であるカピラ仙のアシュラム(修行するための道場)に縛り付けた。

サガラ王は、盗まれた馬を見つけ出すように、息子である6万人の王子たちに命じた。王子たちは地上、下界、あちこちを探し回った。

カピラ仙を探し回る王子たちの喧騒に悩んだ神々がブラフマー神に相談すると、ブラフマー神は「王子たちはヴィシュヌ神の化身であるカピラ仙によって滅びるであろう」と告げた。

馬を探していた6万人の王子が焼殺される。

ガンガーの神話③
カピラ仙に焼き殺されて灰となる6万人の王子たち(出典:sagarworld.com)

長い探索の結果、王子たちはカピラ仙のアシュラムに馬が縛られているのを発見し、馬を盗んだ犯人はカピラであると考えてカピラ仙を襲撃し始めた。

修行を邪魔されたカピラ仙は腹を立て、カピラ仙の怒りにふれた王子たちは遺灰となり地中深くに埋もれてしまった。

サガラ王は王子たちが帰ってこないことを心配し、孫であるアンシュマット王に命じて捜させた。

王子たちの魂を供養するためにはガンガーの水が必要。

アンシュマット王は遺灰と化した王子達を発見し、焼き殺された王子達を供養するためにカピラ仙に許しを求めたが、カピラ仙は「天界を流れるガンガーを地上に導き、その水で遺灰を浄化しない限り、王子達は供養できない」と伝えた。

ガンガーは、ヴィシュヌ神の足の指から流れ出て、ブラフマー神の町の周りを流れる川で、天界にのみ流れているので地上に下ろす必要がある。

アンシュマット王の息子であるディリーパ王は、ガンガーを天界から地球に下ろすことができないかブラフマー神に懇願したが、ブラフマー神を説得することに失敗した。

バギーラタ王の修行が認められ、ガンガーを地上に下ろす許可が下りる。

ガンガーの神話④
厳しい修行をするバギーラタ王(出典:sagarworld.com)

ディリーパ王の息子であるバギーラタ王は、祖先(遺灰となった6万人の王子たち)を供養しその魂を救済するため、ヒマラヤの山中で数千年にわたる厳しい修行を行った。

ブラフマー神はバギーラタ王の苦行に満足し、ガンガーを地上に下ろす許可を与えた。

ガンガーの神話⑤
白鳥に乗るブラフマー神とバギーラタ王(出典:sagarworld.com)

シヴァ神の助けを借りて、ガンガーを地上に下ろす。

ガンガーの神話⑥
ガンガーを頭で受け止めるシヴァ神と祈りを捧げるバギーラタ王(出典:sagarworld.com)

プライドの高いガンガーは、地上に下りることを侮辱と考え、天から降りて彼女の力で地上界を破壊することに決めた。

ガンガーが地上に直接降下したときの衝撃は計り知れない。地上はその衝撃に耐えることができずガンガーの思惑通り破壊してしまうであろう。

ガンガーを受け止めることができるのはシヴァ神だけであるとして、ブラフマー神はバギーラタ王に「シヴァ神に援助を求めよ」と助言した。バギーラタ王はシヴァ神に助けを求め、シヴァ神はこれを引き受けた。

シヴァ神はヒマラヤに座り、天界から流れ落ちるガンガーを自身の頭で受け止めた。ガンガーはシヴァ神を地球の中心に押し込んで溺れさせようとしたが、シヴァ神の巻き上げた髪の毛の中に閉じ込められた。

これを見たバギーラタ王は、地上にガンガーを流してくれるように、1年間シヴァに祈り続けた。

シヴァ神は、バギーラタ王の苦行に満足し、シヴァ神の髪の毛の中に閉じ込められていたガンガーは、シヴァ神のほつれた髪の毛と体を伝って地上に流れ落ち、ヒマラヤ山中に注がれた。

ガンガーを地上に導き、6万人の王を供養する。

ガンガーの神話⑦
ガンガーを導くバギーラタ王(出典:sagarworld.com)

ガンガーはバギーラタ王の先導に従って地上で7つの流れに分かれ、バギーラティー川、アラクナンダー川、マンダキニ川、ヤムナ川など、ガンジス川の支流となった。

ガンガーは地中深くに埋まる祖先の遺灰の上を流れ、6万人の王子たちの遺灰は浄化され、魂は供養されて天国へ昇ることができた。

ガンガーの神話⑧
ガンガーによって浄化し、魂が救われて天に昇る6万人の王子たち(出典:sagarworld.com)

めでたしめでたし。

シヴァ神とガンジス川

シヴァ神

シヴァ神に関連する神話の中で、ガンジス川が天から降下する話は重要な神話のひとつだ。

ガンジス川の神話を受けて、シヴァ神の髪の毛の中にガンガーが描写されることがある。

上の画像では、シヴァ神の頭上に巻き上げられた髪の毛に花が描かれている。この花が「女神ガンガー」で、そこから流れ出ている水が「ガンジス川の水」を表している。


ガンガダーラとしてのシヴァ神

シヴァ神がガンジス川の流れを受け止めている姿は、「ガンガーダラ」と呼ばれ、エレファンタ島石窟寺院群の彫刻にこの姿が残っている

エレファンタ島石窟寺院のガンガーダラ
エレファンタ島石窟寺院第1窟に残るガンガーダラの彫刻(2018年5月撮影)

なぜガンジス川は神聖なのか?

①シヴァ神の体に触れた水が流れる川

バラナシのガンジス川で沐浴する男性
バラナシのガンジス川で沐浴する男性(2018年5月撮影)

ガンジス川を流れる水は、シヴァ神の体に触れた神聖な水だ。

そのため、普通の水にはない特別な力があると考えられており、

  • ガンジス川で沐浴すると全ての罪が浄められる
  • ガンジス川の水でどんな病気も治る


などと信じられている。

②天国に行ける川

バラナシのガンジス川
バラナシのガンジス川沿いの火葬場、マニカルニカガート(2018年5月撮影)

ヒンドゥー教には「輪廻転生」の思想があり、生前の行いによって次に生まれる世界が決まるとされている。

輪廻はほぼ永遠に(84万回)続き、次にどんな世界に生まれ変わるのかが分からず、輪廻は苦しみであるとされた。

しかし、ガンジス川に遺灰を流すと輪廻の苦しみから解放されて天国に行くことができ、永遠の幸せを手に入れることができると信じられている。

さいごに

ガンジス川は神聖な川として、遺灰が流されたり沐浴する人がいる一方で、人々の生活の場でもあり、水浴びを楽しむ子供や、洗濯や皿洗いする主婦、歯磨きや入浴をする人など、色々な方がいるところが面白い。

上流で水質がきれいなリシケシでは、ガンジス川でラフティングをすることもでき、ヒンドゥー教徒がどれだけガンジス川を神聖なものと捉えているのか疑問に思うこともあるが、それとこれとは別というゆるい感じがヒンドゥー教らしくていいなぁ思うのだった。