ナマステ、Kome(@chankomeppy)です。
2016年にムンバイに住み始めた当初から、気になっていたことがあった。
どうやらメディアに取り上げられるほどのインドで一番有名なオートリキシャーがムンバイを走っているらしい。
デコトラならぬ、デコリキシャーとも言えそうな見た目に加え、フリーWi-Fiや電話、テレビなどを装備しているとか何とかで、インド人の友人がFacebookで記事をシェアしていた。
毎日リキシャ―に乗っているし、いつか乗る機会があるかな。
と思っていたが、なかなかその機会は巡ってこなかった。
すっかり忘れかけていたインド4年目、ついに乗る機会が訪れた。
Twitterでこのリキシャーワラのことをつぶやいたら興味を持っていただけた?ようなので、記事にまとめることにした。
ムンバイで有名な派手リキシャー
— こめちゃん🇮🇳 सप्पोरो में चंकोमे一時帰国中 (@chankomeppy) December 6, 2019
⭕フリーWiFi搭載
⭕スマホ充電可能
⭕お年寄りは10ルピー
⭕無料でチョコ食べ放題
⭕無料でコーヒー飲み放題
などなど
彼は癌で母親をなくし、それから人のためになることをしようと利益度外視でみんなが喜ぶサービスを提供している。
→つづく pic.twitter.com/KyWfs3CQPm
昨日つぶやいた、ムンバイで有名なチャリティーリキシャワラの件、記事にしました🙋🏻♀️
— こめちゃん🇮🇳 सप्पोरो में चंकोमे一時帰国中 (@chankomeppy) December 7, 2019
連絡先も載せましたので、ムンバイに来ることがあれば、ぜひ彼のリキシャに乗って、社会貢献してください☺️🛺✨
▼🛺▼🛺▼🛺▼🛺▼ https://t.co/3Ofks3y5h1
北インドの観光地には悪徳ボッタクリドライバーもいる一方で、ムンバイにはこんなに心温まる運転手さんがいるのです・・・!
オートリキシャ―って?
オートリキシャ―とは、インドで市民の足となっているオート三輪車のこと。
「オート」と言ったり、「リキシャー」と言ったり、「リクシャー」と表現されたり、呼び方は様々。
ちなみに、勘がよい方はお気づきだと思うが「リキシャー」の語源は「人力車」である。
リキシャーの語源
➡ 明治時代に日本の人力車が香港を走っていた
➡ イギリス人「めちゃ便利じゃね?」
➡ アジア各地に持ち込まれる
➡ 当時英領インド帝国の首都だったカルカッタ(コルカタ)にも持ち込まれる
➡ インド全土でリキシャが使われるようになる
➡ 明治40年には日本からインドに年間1万台の人力車が輸出(出典:Wikipedia)
➡ 人力から自転車に(サイクルリキシャ)
➡ 自転車から自動に(オートリキシャ)
日常の小さなところに感じるインドと日本のつながりにホッコリ。
外国人旅行者の多い北インドでは、旅行者相手にぼったくる運転手が多く、リキシャ―ドライバーと悪徳旅行代理店が手を組んでいることもあり、悪いイメージもある。
北インドのリキシャードライバーは、外国人だけではなく、地方からでてきたインド人(=現地の距離感に疎い)に対してもぼったくり運賃を提示するようで、あまりよい評判を聞かない。
私の住むムンバイをはじめとするマハラシュトラ州では、ぼったくり運賃だなんて聞いたことがなく、誰に対しても常にメーターで走ってくれる。小回りもきくので、近場の移動をする際に非常に便利で私も毎日使っている。
Instagram にほぼ毎日リキシャワラの写真を投稿しています😂
こんなに毎日リキシャーに乗っていれば冒頭に書いた有名リキシャワラに興味を持つのは極めて自然なことであった。
※リキシャワラ=オートリキシャーのドライバーのこと。ヒンディー語です。
▼こちらの記事で「~ワラ」の使い方について書いています。
ムンバイで有名な豪華リキシャ―とリキシャワラについて
ムンバイで2014年頃からメディアに取り上げられている有名リキシャワラが、Sandeep Bacche(サンディープ・バッチェ)さん。
スーパーで買い物をして家に帰ろうとしたとき、目の前に派手なリキシャーが一台止まった。それがサンディープさんのリキシャーだった。
あ、あ、あなたは、もしや…あの有名な(名前出てこない)!
ネットで見たことある!
ハハハ、だろな。俺はムンバイでは有名人なんだ。
サンディープだ、よろしくな!
噂に聞いていた通り、リキシャーはめちゃくちゃ派手で、色んなものが装備されている。
わ~!サンディープさんのリキシャーにやっと乗れました!嬉しい!
ところで、フリーWi-Fi搭載と聞きましたがほんとですか?
そうだ。フリーWi-Fiだけじゃないぜ。
俺のリキシャーはファーストクラスリキシャーだからな!
リキシャーの豪華な設備
サンディープさんのリキシャーには、ありとあらゆるものが装備されている。
- フリーWi-Fi
- 固定電話
- 携帯充電ケーブル
- 綿棒・ティッシュ
- 救急箱
- テレビ
- チョコ
- コーヒー・紅茶
- 靴磨きセット
- 雑誌と新聞
- 毎日の天気・株価・FXアップデート
移動中に必要であろう物は何でもそろってるぜ!
飲み物まであるんですね!
よかったらお茶飲んでく?
いただきたい気持ちでいっぱいなのですが、こぼれそうなのでやめておきます。
それもそうだなw
割引運賃やガン患者への寄付
設備ばかりが気になっていたが、ふとリキシャー車内を見渡すとたくさんの写真が貼られていることに気づいた。
これらの写真は彼が提供するサービスに関連するものだった。
- お年寄りの初乗り料金10ルピー (※)
- 結婚したばかりの人は10%割引
- 妊婦さんは無料
- 緊急で病院に行く人は無料
- 試験期間中は学生さん無料
- ラクシャバンダン等の女性の日は女性無料
- 国民の祝日は誰でも無料
- 自分の誕生日 (12月31日) も誰でも無料
- 運賃のうち2ルピーはガン患者を支援する団体に寄付
※ムンバイの初乗り運賃は18ルピー
わ~ぉ、すごい!どうしてこんなサービスを始めたんですか?
話せば長くなるぜ、へへ。
豪華な設備とサービスの背景
サンディープさんは貧しい家庭に育ち、最終学歴はクラス10終了。
日本の教育システムに当てはめると、高校中退みたいな感じ。
初等教育:初等学校5年+上等初等学校3年
中等教育:中等学校2年+上等中等学校2年
高等教育:大学3~4年
初等教育終了=日本の中卒に相当
中等教育終了=日本の高卒に相当
中等学校2年を終えたのち、旅行会社でオフィスボーイ(業務内容:お茶くみや雑務全般)として働き始めた。
そのときテレビやWi-Fi接続などの豪華な設備が整ったバスに出くわし、将来自分が車を所有することがあれば、同様の設備を持つと決めたそう。
サンディープさんが働いていた旅行代理店はインドから撤退することとなり、その時の退職金を原資にしてリキシャワラ業界へ。
数年後、彼の母親はガンと診断された。しかしサンディープさん一家は十分な治療を受ける金銭的余裕がなかったそう。必死で治療費を工面しようとあちこち走り回ったが援助をしてくれる人はいなかったという。ただ一人、Sanjay Datt(サンジャイ・ダット)氏を除いては。。。
ボリウッド(※)に詳しい方ならご存知、インドで超超超超超有名人のサンジャイ・ダット氏。彼の半生を描いた映画「Sanju」は日本でも公開されたほどだ、と言えばどれほどの有名人か伝わるだろうか。
※ボリウッド:インドのムンバイ発の映画のこと。ハリウッドをもじって「ボリウッド」(ムンバイの旧名ボンベイにちなむ)と呼ばれている。
俺の母ちゃんは助からなかったけどよ、彼のような超有名人がさ、俺みたいなリキシャードライバーが困っている時に援助してくれるってさ、めちゃくちゃ感動したよな。
それで「俺もなにか行動を起こさなきゃ」って思ったのさ。
いい話ですね。
後ろに募金箱があるだろ。
みんなから集めた募金と運賃の内2ルピーは、病院や教会に寄付したり、貧しいガン患者を援助するために使ってるんだ。
毎週日曜日にはガン患者たちに朝食を配ってるんだ。少しでも力になれればいいと思ってる。
でも、こんなこと聞くのはアレですけど、設備の固定費に、割引・無料運賃、寄付…
これじゃあサンディープさんの商売にならないんじゃないですか?
みんながハッピーになってくれれば俺もハッピーなんだ。
俺にとってお客様は神様なんだ。
・
・
とは言っても、俺にも養わなければいけない家族がいる。
インターネットのおかげで俺は有名になれた。そして有難いことに俺のリキシャーに乗りたいという人も増えた。
俺が必要なときは、この電話番号に連絡してくれたらよぉ・・・相談に乗るからな!
>通常の流しのメーター運賃と乗客からの募金以外では、彼のリキシャーと社会貢献活動に賛同する個人からの依頼分(割高運賃)が収入源とのこと。
私も、友達が来たときなど、ここぞという時に利用させてもらいますね!
うぃ~、電話待ってるぜ!
▼サンディープさんを紹介するYoutube
さいごに
サンディープさんの活動に心打たれた方は、ムンバイに来ることがあればこちらの番号に連絡してみてください。
ムンバイ滞在の素敵な思い出になるに違いありません。ちなみに、英語もお上手なので、コミュニケーションの心配不要。
(そして北インドのすべてのリキシャワラは、サンディープさんに弟子入りしてほしい… )
ムンバイに来たらサンディープさんに会おう!
ちなみに、サンディープさんの写真を見て気づいたこと。
ムンバイ(マハラシュトラ州)のリキシャーワラの制服は白とカーキの2色展開。
白い制服を着ることができるのは、自分でリキシャ―を保有している自営業ドライバーのみ。
カーキの制服のドライバーは、誰かからリキシャーを借りたり、どこかしらの組織に所属している雇われドライバーだ。
メディアに出始めたころのサンディープさんの制服の色はカーキ色だったが、今は白色の制服を着用している。
ここ何年かで、リキシャー代を全額返済し自営業となったようです!(軽いネットストーキング)
▼2013年のサンディープさん(制服カーキ色)
Met the owner of the most blinged rickshaw, Sandeep Bachche aka King of Bandra. pic.twitter.com/glJwKoEX4z
— Vijayeta (@vi_basu) April 24, 2013
▼最近のサンディープさん(制服白色)
Had always heard about @sandeepbachche. Finally got to meet him
— Vinesh Prabhu (@vlp1994) November 11, 2019
He is a huge Sanjay Dutt and Salman Khan. He believes in lot of charity. People book him from all over the world and he was waiting for 2 foreigners from England. What a rickshaw. Would love to ride in it pic.twitter.com/muqbd7ByxE
Just met the most generous and famous rickshaw driver @sandeepbachche. Check out the services; call him to take celebrity house tours proceeds of which go to cancer patients #Bandra #HumansOfMumbai pic.twitter.com/5QsXVZXQ5L
— Hansi (@HansiMehrotra) October 12, 2019
ムンバイのいいところって、やっぱりヒトだわ…としみじみ思うのでした。
おしまい。
この記事がおもしろい!共感した!役に立った!という方はシェアしていただけると嬉しいです♪
(PCの場合は画面の左側、スマホの場合は画面の下側にシェアボタンがあります)
こういう底なしの善人がいる。生馬の目を抜くようなムンバイで。インドすごい。 https://t.co/aQUqXDlkgf
— 🇮🇳楽しいインド案内人アンジャリ/八尋美樹 (@Anjali_Masala) December 7, 2019
インドだからとかじゃなくて、こういうバックグラウンド知ると応援したくなる人ってすごく魅力的!人間利益に走りがちだけど、自分の幸せの方向を理解出来て行動出来てる人ってそう多くはない。 https://t.co/09pEv9rmCw
— なつき@英語力強化中 (@natsuki93710264) December 7, 2019
はじめまして。いつもブログやInstagram拝見しています。来月にチェンナイに旅行するので、本物リキシャに乗るつもりです。映画の中でしかインドについて知らないのですが極端な無慈悲と慈悲が混じりあってカオスなイメージ。そしてブログを読んで私の中でサンジャイの株が上がりました🌻
— WADA Noriko (@wada__noriko) December 7, 2019