ナマステ、インド在住のKome(@chankomeppy)です。
先日、2020年1月最大ヒットのボリウッド映画、「Tanhaji -Unsung Worrior-(タナジ ~名もなき戦士~)」を観てきた。
今月最大ヒットのインド映画、Tanhaji(タナジ)をようやく明日観に行く☺️
— ᴷₒᴹₑ🇮🇳 गुड़गाँव में🕉️ (@chankomeppy) January 22, 2020
時代は17世紀後半、ムガル帝国は第6代皇帝アンラングゼーブの時代。
マラタ王国建国者シバージが率いる軍の大将タナジが、ムガル帝国に奪われたシバージの要塞を取り戻した実話。
▼トレーラーhttps://t.co/Vja5Hts8yV pic.twitter.com/4Nwo3eajdn
マラーター王国を建国したマハラシュトラ州の英雄、チャトラパティー・シバージが率いる軍隊のリーダーであった戦士「タナジ・マルサレ(Tanaji Malusare)」の実話に基づくお話だ。
私は中世から近代にかけてのインドの歴史ネタが大好きで、特に、ムンバイに住んでいることもあり、マラーター王国ネタが大好物。予習した甲斐もありとても楽しめた。
歌あり、踊りあり、感動ありの、時代劇アクション3D、タナジについてまとめま~す!(ネタバレあり)
▼目次はこちら (クリックして表示)
はじめに:超大ヒット作です。
2020年1月10日(金)公開で、私が観に行ったのは公開2週目。。インドの映画館では公開から2週間で終了となることが多いが、Tanhajiは記事執筆時点(公開4週目)でも一部の映画館で公開されているほどの人気っぷり。
インドにおいて、映画は最大の娯楽で、2019年は2,200本 (*1) の映画が劇場公開された。
日本での公開本数1,297本 (*2) の約1.6倍。したがって、映画の上映期間は日本よりも短く、人気がなければ1週間で打ち切りとなることもある。
出典:
*1: India’s Movie Trands for 2019
*2: Wikipedia: 2019年の日本公開映画
2020年2月3日(公開24日目)時点での興行収入は25億ルピー(約38億円)。
興行収入だけで見ると「翔んで埼玉(興行収入:37億円)」と同じくらいだが、日本の映画チケット代が1,800円なのに対し、インドは200~300ルピー(約300~500円)程度と激安であることを考慮すると、もうね、日本における天気の子くらい人気ってことですよ(さすがに言い過ぎたかも)。
そんなわけで、2020年ボリウッド映画興行収入ランキング上位に入ること間違いなし!と言われている。
やはりマラーター王国があったマハラシュトラ州で人気のようで、興行収入のうち4割を占めているようだ。
▼興行収入の詳細はこちらのサイトから見れます。
www.bollywoodhungama.com
ストーリー(ネタバレあり)
ストーリーはほぼ歴史通り。
歴史とストーリー
時代は17世紀のインド、衰退し始めたムガル帝国と、シバ―ジ(Shivaji)をリーダーとする勢力(のちのマラーター王国)が対立していた時代。
17世紀半ば、シバージはムガル帝国に目をつけ、皇位継承問題に乗じてムガル帝国の領土を襲撃し、略奪していた。
事態を重く見たムガル帝国第6代皇帝アウラングゼーブ(Aurangzeb)(タージマハルを建てたことで有名な第5代皇帝シャー・ジャハーンの息子)は、ラージプート(ラジャスタン地方)のアンベール王国(現ジャイプール)のマハラジャであったジャイ・シン(Jai Singh)を討伐に向かわせ、シバージが統治していた要塞は次々と攻め込まれていった。
1665年、シバージが拠点としていたプランダール要塞がムガル帝国軍に包囲され、シバージはジャイ・シンとプランダール条約締結を余儀なくされた。
条約の内容はムガル帝国に有利な内容で、シバージが統治していた要塞の大半をムガル帝国に引き渡すこと、無条件でムガル帝国軍を支援すること等が規定された。この条約とは別に、シバージはアウラングゼーブと今後のやり方について話し合うためアーグラを訪れることも求められ、1666年に訪問。アウラングゼーブと面会するも、両者の意見が合わず幽閉されたが警備の隙を狙って脱出。その後アウラングゼーブが反ヒンドゥー教の姿勢を強めたため、シバージはプランダール条約を破り、ムガル帝国領土を次々と襲撃・略奪。 ←映画内ではほぼ触れていないが、歴史とストーリーをより深く理解できるように記しておりますφ(..)
プネーから約30km離れた場所にある コンダナ要塞は、プランダール条約によってムガル帝国の手に渡った要塞のひとつであり、この映画の舞台となる場所。
アウラングゼーブは、ジャイシンに仕えるラージプートの王でありムガル帝国に服属していたウダイバーン・シン・ラトール(Udaybhan Singh Rathore)をコンダナ要塞の当主として送り込むことにした。
コンダナ要塞は、軍事的に重要な要塞の中心に戦略的に配置された要塞で、シバージが失った要塞の中で最も重要なものだった。1670年、シバージは、コンダナ要塞をムガル帝国から取り戻すよう、シバ―ジ軍のリーダー、タナジ(Tanhaji)に命令した。
コンダナ要塞はムガル帝国軍によって厳重に守られており、当主のウダイバーンをはじめ、5000人以上の兵士が要塞の警備にあたっていた。それに対し、タナジらシバージ軍は1000人程度。正門から真っ向勝負で突入しても勝ち目はない。
要塞は急な崖の頂上にあるため、正門以外からの侵入は不可能と考えられており、崖部分には警備が置かれていなかった。
そこで、タナジらシバージ軍は、正門からではなく、崖を登って要塞を目指すことにした。そのあまりにも危険で険しい道のりに、要塞に到達したときには、1000人いた兵士が300人に減っていたという。
ムガル帝国軍は、まさか崖を登ってやってくるだなんて予想もしておらず、タナジらはムガル帝国軍が気付かぬうちに要塞内に入り込み、攻撃を開始した。
戦いを繰り広げるなかで、タナジはウダイバーンに片腕を切られてしまう。崖を上ってきた疲労、そして片腕を失うという致命傷を負いながらも、タナジは戦い続け、ウダイバーンに致命傷を負わせた。
タナジは戦いの途中で亡くなるも、タナジ軍は戦いをつづけ帝国軍に勝利、コンダナ要塞は再びシバージの支配に置かれることとなった。
しかし、シバージは戦いでタナジが亡くなったことを知り「砦(とりで)は戻ってきたがライオンは行ってしまった」と叫んだと言われている。
勇敢に戦ったタナジをに「ライオン」に例えているのだが、現地語のマラティー語でライオンは「シナ(Sinha)」と言う。シバージは、タナジに敬意を表して、コンダナ要塞を「シナガッド(Sinhagad)要塞」(=ライオンの要塞=タナジの要塞)に改名した。
これが、1670年2月4日の「シナガッドの戦い」である。
戦略的に優位なシナガッド要塞を取り戻したシバージは、数か月の間にプランダール条約によって失った要塞と領土の大部分を奪還、1674年までにデカン高原一帯とその南部に領地を広げ、マラーター王国の樹立を宣言した。
タナジがいなければ、シナガッドの戦いでの勝利がなければ、マラーター王国は存在しなかったかもしれず、タナジが果たした役割は非常に大きい。
しかし「マラーター王国」=「チャトラパティー・シバージ」のイメージが強く、「タナジ」の名はそこまで広く知れ渡っていない。Wikipediaのページ(英文)に情報が少ないことからもそのことが分かる。
映画のサブタイトル「Unsung Worrior」は、「名もなき戦士」「知られざる英雄」という意味であるが、マラーター王国の設立に大きく貢献したタナジの功績が、350年の時を経て、映画を通じて多くの人に知れ渡ることとなった。
歴史と異なる点
実際の歴史と大きく異なる点は、映画では、タナジは致命傷を負いながらもウダイバーンを倒し、戦いに勝利した後に、シバージらに見守られながら息を引き取る。
※歴史では、タナジは戦いの最中に亡くなり、タナジの部下がウダイバーンにとどめをさしたため、シバージはタナジの死に立ち会っていない。
ここが感動ポイントのようで、周りの席のインド人達は涙を流していた。
残念ながら、私はヒンディー語が不自由であるために具体的にどんなセリフを言っていたのかは分からないが、いつか日本語字幕(or 吹き替え)が出ることがあれば、もう一度観て、感動したいなぁと思う。
見どころ
個人的におもしろ~い!と思ったポイント。
17世紀のムガル帝国の宮廷の様子
17世紀のムガル帝国の宮廷の様子が再現されているシーンがいくつかある。ムガル帝国といえば、アーグラのタージマハル、アーグラフォートや、デリーのレッドフォートといった建造物が有名だ。
これらは観光地として訪れたことがある人も多いと思うが、実際にそこで生活していた様子が再現されているので、ワクワクする。
▼アウラングゼーブが編み物をしていたり
▼人間チェスとか、怖いわぁ…。
時代劇で真面目な内容だけどもちろん歌って踊る
ボリウッド映画だからねww
▼Youtubeでフルで観れます。
タナジ役とその奥さん役は実生活でも夫婦
奥さん役は、リアル奥さんのカジョール(Kajol)。インド映画で夫婦や家族が共演すると、人気が出やすいらしい。
なんかほっこりするね。
キャスト
タナジ役
Ajay Devgn(アジャイ・デーヴガン)
これまでに100本以上のボリウッド映画に出演。日本でいう国民栄誉賞的なものを受賞するほどの、インドを代表する一流俳優。
マッチョで演技派なのでいろんな役に引っ張りだこ。
映画製作会社「Ajay Devgn FFilms」を保有しており、この映画も同社の制作によるもの。自分の会社で映画を作って、それに主演して、リアル奥さんを奥さん役にして…めちゃくちゃ儲かる~w
ウダイバーン役
Saif Ali Khan(サイフ・アリ・カーン)
父は有名クリケット選手のMansoor Ali Khan(マンスール・アリ・カーン)。現在のハリヤナ州にあったパタウディ藩王の一族であり、2011年に父が亡くなると「パタウディ藩王(Nawab of Pataudi)」の称号を引き継いだ。ちなみに奥さんは人気女優のKareena Kapoor(カリーナ・カプール)。
シバージ役
Sharad Kelkar(シャラド・ケルカール)
マラティー語の映画によく出てる俳優で、最近はTollywood(テルグ語映画)やKolywood(タミル語映画)にも出始めているらしい。
アウラングゼーブ役
Luke Kenny(ルーク・ケニー)
祖父が第二次大戦後にミャンマーに移住したアイルランド人、祖母がイギリス人、その息子の父とイタリア人の母の間に生まれたのでインド人らしくない見た目をしているが、インド国籍。
さいごに
映画が終わり外に出ると、こんな看板が目に入った。
さっきまで悪役だったのに、こんなにもニコニコしていて、頭が混乱した。役者さんはすごいわ(しみじみ)。
おしまい。