ナマステ、インド在住のKome(@chankomeppy)です。
先日2020/1/10(金)、大好きなディーピカさま主演の「Chhaapaak」が公開したので、早速観てきた。
ディーピカ様主演のChhapaakが1/10から公開。
— ᴷₒᴹₑ🇮🇳 गुड़गाँव में🕉️ (@chankomeppy) January 3, 2020
Acid Attack(酸攻撃)の生存者のお話で、2005年にカーンマーケットで酸攻撃に合った女性の実話に基づくもの。
インドは酸攻撃の被害が世界最大😢
絶対見に行く🎥
▼オフィシャルトレーラーhttps://t.co/tGXbaiAIPs pic.twitter.com/gu4iWfu1rH
ディーピカさまが相変わらず美しかったのと、映画を通じて酸攻撃の実態を知ることができたので、そのお話についてまとめます。
※ネタバレありです。
▼目次はこちら (クリックして表示)
インドにおける酸攻撃
まずはじめに、インドの酸攻撃の実態について。
概要
酸攻撃(Acid Attack)とは、女性の顔面に酸をかけて大やけどを負わせる攻撃のことで、バングラデシュやインドでの被害が多くみられる。
国連の調査によると、男女間のトラブルが動機となっていることが多いが、これは加害者男性の一方的な逆恨みや嫉妬によるものである。
また、不動産や家畜を巡る近隣住民や親族間の争いにその一家の女性が巻き込まれて被害に遭うケースもある。家族や親戚、親しい友人が加害者となることもあり、非常に恐ろしい。
インドでは、酸を購入するのに特別な資格や免許は必要ない。薬局などでリン酸などがサビ取り剤として売られており、だれでも、手軽に酸を買うことができる。
▼インドの薬局で売られている酸を使用している動画
こんなにも強力な酸が容易に手に入る環境のため、酸攻撃が後を絶たない。2013年に最高裁は、18歳以上の大人に対して酸の店頭販売を制限するように政府に命じたが、この規制は全く機能していない。
被害件数
犯罪記録局が発表したデータによると、2014年から2018年までの5年間で約1,500人が酸攻撃の被害に遭っている。
2013年の最高裁による酸の店頭販売規制命令が出る以前よりも被害件数が多くなっており、被害件数は年々増加傾向にあるが、起訴件数は減少している。
直近を見てみると、2017年と2018年の2年合わせて596件の酸攻撃が警察に報告され、623名の女性が顔や体に酷いやけどを負った。しかし起訴されたのは各年とも149名のみ。623名の被害者に対し、その半分以下の298名しか警察に「加害者」として認識されていない。
これに加え、加害者からの報復を恐れて事件を表ざたにせず、警察に報告しないケースも存在するため、実際の被害は犯罪記録局のデータを上回るとされる。警察に報告しないケースも含めると、インドでは毎年1,000件以上の被害があるとも言われている。
酸攻撃事件発生件数を州別に見てみると、ウッタル・プラデーシュ州、ウエスト・ベンガル州、デリー連邦直轄領をはじめとする北インドでの事件数が圧倒的に多い。
映画について
Chhaapaakの意味
「Chhaapaak」とはヒンディー語で液体がなにかに当たったときの擬声語だそう。「バッシャ~ン」みたいな感じなのかな…
実話に基づくストーリー
酸攻撃を受けた生存者のお話で、Laxmi Agarwal(ラクシュミー・アガルワル)さんの実話に基づく内容。
2005年、当時15歳だったラクシュミーさんは、当時32歳のナイーム・カーンというキチガイに好かれてしまう。キチガイはラクシュミーさんに熱狂し「君が大好きだ」「君なしでは生きられない」「結婚しよう」等とメッセージを送り続けるも、ラクシュミーさんはこれを拒否(そりゃそうだ)。
キチガイはラクシュミーさんが他の男性と仲良くしている姿を見て発狂し、彼女の人生をめちゃくちゃにしてやろうと、デリーのカーンマーケットで一人で歩いていたラクシュミーさんの顔面に酸をかけて逃亡。ラクシュミーさんの携帯に届いていたメッセージからすぐに容疑がかけられるが、2005年に始まった裁判は2013年まで続く…。
数か月におよぶ入院生活の後、無事退院し、背中の皮膚を顔面に移植する手術などを行っていった彼女。当初は酸による顔面の崩壊にショックで家に引きこもっていたが、弁護士さんや家族からのすすめもあって少しずつ外に出ていくように…。
酸攻撃の被害者女性の権利を守る団体で活動を始め、顔を隠すことなく堂々と講演をしたりテレビに出たり…、同じ団体に所属する男性との恋物語もあったり…。
というラクシュミーさんの実話に基づくストーリーを、彼女の活動に感銘を受けたボリウッド女優、Deepika Padukone(ディーピカ・パドゥコーン)が演じている。
現在29歳のラクシュミーさんは、酸攻撃の被害者女性の権利を守る活動「Stop Acid Sale」を行っている。2014年には、女性の権利や男女平等などの問題に対して顕著な活動をした女性に贈られる「International Women of Courage Award(世界の勇気ある女性賞)」を当時の米大統領夫人であったミシェル・オバマ氏より受賞するなど、世界中で彼女の活動が評価されている。
▼Wikipediaにもラクシュミーさんのページがある(英語版のみ)
▼TEDでも話している。
興行収入は公開初日4,770万ルピー(約7,200万円)、2日目6,900万ルピー(約1億円)、3日目7,350万ルピー(約1億1,000万円)、3日で3億円弱。う~ん、微妙?(笑)
視点のズレた見どころ
どれだけ内容を予習&復習しても、ヒンディー語の映画なので、細かな描写までは読み取ることができないのが悲しいところ。
その結果、ストーリー以外のところが気になって気になってしょうがないのだ。
例えば・・・
2005年と2010年代前半のインドの様子が細部まで再現
物語の舞台は、主人公が酸をかけられた2005年と、社会活動を行っている2010年代前半のデリー。
当時の町並みが細かく再現されているのがなんとも堪らん。今はなき、Cyber Cafeの看板があったり、細かく当時の様子を再現していた。
Cyber Cafe(サイバーカフェ)
ネットカフェのこと。砂ぼこりをかぶったXPのパソコンが薄暗い部屋の中にズラーっと並んでいた。スマートフォンの普及とともにインドの町から消えた。
また、2005年のシーンで使われている携帯電話が、日本の90年代半ばレベルのしょぼいやつなの。当時の日本の携帯電話はカラー液晶でテレビ電話もできたんですよ。すごい差だわ~。2010年代前半のシーンではノキアだったり、旧式サムスン製スマホだったり、これまた懐かしい。さすがにもう使っている人はほとんど見ないわ。
と思ったら、未だに使っている人はいるようだ。ノキアの古い携帯は『大人のオモチャ』としてインドで今もなお人気とのこと。バイブレーションがかなり強力らしい。
▼こちらの記事
Indian Jugaad(※)だね、うけるわ。
Jugaad(ジュガード)
限られた資源のなかで、創意工夫によって解決方法を見出すこと。インド人の生活にジュガード精神は深く根付いており、いま手元にあるものを本来とは違う使い方をすることで新たな価値を与えるというクリエイティブな手法。
話が脱線してすいません /(ᐢoᐢ)\
学生服姿のディーピカさま
主人公は15歳の時に酸攻撃に遭った。
⇒ ディーピカさまは、15歳のシーンも演じており、そこでインドの学生を着ているのだが、とても萌えた。
▼こんな感じの学生服を着ていました。
▼こんな感じのださめのリュックを背負っていました。
身長170センチでオーラむんむんのディーピカさまの学生服姿は、ひそかなる見どころではないかと個人的には思う (ᐢωᐢ)
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\じゃじゃ~ん/
漂うコスプレ感に萌えてしまうね。
特殊メイクのディーピカさま
酸攻撃を受けた後のシーンでは、顔面だけではなく、首や腕にも特殊メイクをほどこしている。これが結構リアル。
特殊メイクはご覧の通り、ラクシュミーさんご本人にかなり似せており、シーンにあわせて少しずつ調整している。
ただ、メイクが相当厚いようで、笑うと目尻部分に塗りたくったメイクがしわとなって現れちゃうあたり、インドクオリティなのかも。
映画の社会への影響
映画の公開を受け、インドでは酸攻撃があらためて注目されている。北インドのウッタラカンド州では、「女性と子供の福祉大臣」のRekha Arya(レカー・アルヤ)氏が酸攻撃の生存者への年金制度開始について進めていると2020年1月11日(映画公開翌日)に発表した。
The government is planning to start a pension scheme under which Rs 5000-6000 will be provided every month to the survivors so that they can live a life with dignity. We will be bringing the proposal in the cabinet to get it approved to further implement the scheme. The idea is to support the brave women in achieving their dreams.
Chhapaak impact: Uttarakhand to start a pension scheme for acid attack survivors
<単純英訳>
「州政府は年金制度の開始を計画しており、その制度下において、酸攻撃の生存者は、個人の尊厳ある生活を送れるように毎月5000~6000ルピー(約7500~9000円)が支給される予定です。この提案を閣議に持ち込み、スキームを実現するために承認を得ます。この年金制度考えは勇敢な女性が夢を実現するのを支援するためのものです。」
映画の興行収入はさておき、酸攻撃生存者の女性の権利向上に対して、今後もポジティブな影響が続きそう。
おわりに
インドの映画は歌って踊ってハッピーエンド♪というイメージが強いが、シリアスな社会問題を取り上げているものも多い。
映画というインド最大の娯楽を通じて社会問題を訴えるというやり方が、なんとなく最近多いような気がする。
おしまい。