ナマステ、インド在住のKome(@chankomeppy)です。
もう1月7日…遅くなりましたが、あけましておめでとうございます!
2019年~2020年の年末年始は南インドのタミルナードゥ州南部を旅行した。
1月1日元旦はカライクディ(Karaikudi)という、19世紀にチェッティナード文化が栄えていたところにいたのだが、素敵なランゴリをたくさん見かけたのでご紹介。
▼カライクディの場所
ランゴリ(コーラム)とは
ランゴリ(Rangoli)とは、建物の入り口に描かれる幾何学的な線の模様のことで、お花や動植物、天体・宇宙をモチーフにして描かれることが多い。
インド全土でランゴリという名で通じるが、南インドではコラーム(Kolam)、アンドラ・プラデーシュ州やテランガナ州ではムッグル(Muggulu)、ビハール州のミティラー地方ではアリパン(Aripan)とも呼ばれる。
主にお祭りやお祝い事があるときに描かれ、ヒンドゥー教暦の新年「ディワリ(Diwali)」に描かれるカラフルで美しいランゴリは特に有名。ヒンドゥー教の繁栄の神様であるラクシュミー神を家に招き入れるため、家の入り口をランゴリで綺麗に飾り付けるのだが、実に芸術的でうっとりする…(ᐡωᐡ)
南インドでランゴリを描く目的
ランゴリはその美しいデザインにばかりに注目してしまうが、南インド(特にタミル圏)においては、ランゴリを描く本来の目的は家の入り口を綺麗に飾るためではない。
南インドのランゴリ(コーラム)は、伝統的には米粉を使って描かれ、特別な時だけではなく毎日描かれている。
米粉は、蟻などの小さな虫や、鳥や小動物の餌になる。毎日毎日、虫や鳥、小動物にランゴリの米粉を餌として与えることは、人類と動植物の調和のとれた共存に日々貢献しているということであり、「神様だけでなく、すべてのものを歓迎しますよ」というサインとして、ランゴリが描かれているそうだ。とても素敵な話である✨
ランゴリ(コーラム)の描き方
ヒンドゥー教徒の家庭では、女性はランゴリを上手に書けるように小さい時から練習するそうだ。デザインは母から娘へ、代々受け継がれる。デザインひとつひとつには意味があり、下向きの三角は女性、上向きの三角は男性、丸は自然、四角は文化を意味する。他にも、ロータス(蓮の花)は子宮、ペンタグラム(星形)はビーナス(金星)、孔雀は不死の象徴などなど…非常に奥が深い。
ただし、これは地方部の話で、都市部の若い女性はランゴリを描く機会がないため、器用に描ける人はごくごく一部のみ。
ランゴリの描き方は、粉を手ですくい、指の隙間から少しずつ粉をこぼして描いていくのが伝統的なやり方。都市部ではチョークで下書きしたり、型を使ったりして描くのが一般的。
▼伝統的なランゴリの描き方。大晦日の夕暮れ前にホテルのスタッフが描いていたものを撮影した。
スラスラと描いているので簡単そうに見えるが、それは彼ら・彼女らの日々の積み重ねの結果である。
ホテルスタッフが書いたランゴリは、動画からも分かるように巨大で、数人で一時間近くかけて仕上げていた。
ホテルの巨大カラフルランゴリ
2020年新年のランゴリ
ホテルのスタッフと話していると、「明日(元旦)は町中にカラフルなランゴリが描かれると思うよ!」とのこと。翌日わくわくして町に繰り出すと、シンプルなものから立派なものまで、たくさんのランゴリが町を彩っていた。
シンプルなランゴリ(コーラム)
この地方では、伝統に則って、いまでも毎日ランゴリが描かれている。そのため、簡単なデザインで、白一色でパパっと描かれる。
そんなデイリー用ランゴリに「あけおめ~」のメッセージを添えただけの、シンプルなランゴリたち。
特別感はなし。6枚目はちょっと凝っているかな?
カラフルなランゴリ(コーラム)
ランゴリに色粉を加えてひと手間かけたもの。少し手間をかけるだけでカラフルで美しいランゴリになる。
いくつものモチーフを組み合わせて作るデザインも見物(みもの)な、彩り豊かなランゴリたち。
蓮の花をモチーフにしたデザインが多かったよ!
気合いが入ったガチなランゴリ(コーラム)
それなりの時間をかけて真剣にガチで描いたであろうランゴリもいくつかあった。
色使いが超鮮やかで、グラデーションになっていたり、細かいところまで抜け目がなかったり、芸術の域に達する作品たち。
孔雀をモチーフにしたきめ細かいデザインが多かったよ!
ホテルの巨大カラフルランゴリ(コーラム)
宿泊したホテルでスタッフのランゴリもガチ系だった。
ホテルのスタッフが、フリーハンドで思いつきのデザインでスラスラと器用に描く。
ちなみに、ランゴリを描くのは一般的には女性のお仕事。この動画のスタッフは男性なのにこんなに上手に描けてすごい
そして細かいところにも強いこだわりを持っている。インド人のこういうスペシャリストなところは好きだなぁ~。
スタッフたちの手つきは慣れたもんで、すごいなぁ~と思って見ていると、私の目線を感じたのか「マーム(※)も描いてみますか?」と言うので試してみた。
※マーム=マダム
試してみると見た目以上に難しくて、まっすぐに線を描くこともできなかった。なかなかコツをつかめずに悪戦苦闘。
私が線を引いた上から描きなおされたり、「マームは簡単なところやってください」と言わて「2020」部分の色塗りしかやらせてもらえなかったりする事態が発生した。実力社会である。
おわりに
私の住むムンバイでは、ディワリ(ヒンドゥー教歴の新年)以外でランゴリを見かけることはまずない。インドの文化は、東西南北各地域、州で大きく異なるのを改めて感じた。
昔からの伝統に則って、米粉を使わない今もなお、毎日毎日新しいランゴリを描いているだなんて、南インドの古き良き文化。
個人的なヒットはこれ 美しすぎる・・・✨
ランゴリは、綺麗なコンクリートや大理石の上よりも、土の上に描いたほうがいいみたい。というのは、大理石などは表面が滑らかすぎるので、粉が風で吹き飛ばされたりするみたいで、デザインが崩れやすいとのこと。
土の上なら、表面の凸凹が摩擦となるので、デザインが崩れにくい。牛の糞を塗って乾燥させてからランゴリを描くとさらにいい感じの凸凹具合になるらしいのだが、頭では分かっていても家の玄関の入り口に牛糞があるのは、少し…いや、結構抵抗があるね~