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インドでメジャーな宗教をサクッと解説 ②イスラム教

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インドゆるゆる生活

タイトル画像(インドでメジャーな宗教をサクッと解説 ②イスラム教)

ナマステ、インド在住のKome(@chankomeppy)です。

インドの宗教というと「ヒンドゥー教」がまず頭に浮かぶ。 ヒンドゥー教はインドで誕生し、インドの全国民の約8割が信仰している。

インドは多宗教の国でもある。ヒンドゥー教の他に、ジャイナ教、や仏教、シーク教もインドで誕生したし、外来のイスラム教やキリスト教、ゾロアスター教の信者も多い。

そこで今回は、インドのメジャーな宗教について簡単にまとめてみることにした。

この記事ではイスラム教についてまとめるよ!!

インドの主要な宗教

  1. ヒンドゥー教
  2. イスラム教 ←今回のテーマ
  3. キリスト教
  4. シーク教
  5. 仏教
  6. ジャイナ教
  7. ゾロアスター教

▼目次はこちら (クリックして表示)

はじめに:インドで信仰されている主な宗教

インドの直近の国政調査(2011年実施、2015年発表)によると、主な宗教は以下の通り。

宗教信者数割合
ヒンドゥー教9億6,620人79.80%
イスラム教1億7,220人14.23%
キリスト教2,780万人2.30%
シーク教2,080万人1.72%
仏教844万人0.70%
ジャイナ教445万人0.37%
ゾロアスター教5.7万人---

インドでイスラム教徒が多い地域

インドで2番目に信者が多いのがイスラム教だ。

インドネシア、パキスタンに次いで世界第3位のイスラム教徒(ムスリム)人口を抱えている。(出典: Muslim Population By Country 2020

インド全体でみるとムスリム人口は14%だが、ムスリムが大半を占める地域もある。

2019年にジャンムー・カシミール州は廃止され、ジャンムー・カシミール連邦直轄領とラダック連邦直轄領に分かれた。

ラクシャドウィープはインド洋に浮かぶ島々で人口6万人あまり。モルジブにも近いが外国人観光客はあまり訪れないかな?

ジャンムー・カシミールはパキスタンと国境を接する地域で、インドとパキスタンが分離独立する際に住民の多くがパキスタンへの帰属を望んでいたが藩王がインドへの帰属を表明し、現在も紛争が起きている。

アッサム州とウエスト・ベンガル州はバングラデシュに隣接し、バングラデシュがパキスタンから独立する際、紛争から逃れるために多くの東パキスタン住民(ムスリム)がアッサムやウエスト・ベンガルなどに亡命してきた。

ケララ州は後述する通りイスラム教の歴史は古いが、大半は植民地時代にヒンドゥー教から改宗したムスリムで「マーピラ」と呼ばれている。中東の宗教や食文化に抵抗が少ないことから、出稼ぎに行く人が多く、UAEの人口の1割強はケララ州出身だと推定される。

ウッタル・プラデーシュ州は、州都ラクナウがムスリムの町。ムガル帝国時代にアワド太守が治めていた場所でムガル帝国後期は首都のデリーよりもムガル文化が栄えた。インドでは珍しくシーア派の建物が多い。

インドのイスラム教の歴史

イスラム教は7世紀に預言者ムハンマドにが創始した宗教だ。インドではムハンマドが誕生する以前からアラブの国々と香辛料貿易をしていて、アラブの国々とのつながりがあったので、アラブの貿易商を通じてイスラム教が流入するのは自然なことであった。

初期のイスラム教は南インドの西海岸(現在のケララ州北部、マラバール海岸)に伝わり、ケララ州の州都コチの近くには、629年に建てられたとされるCheraman Jumah Masjidがある。これはインド亜大陸に現存する最古のモスクである。

インドにはこの時すでに多くのアラブ人が定住していたため、彼らを布教の基盤としてイスラム教はインドに浸透していったと考えられるが、民族宗教として定着しているヒンドゥー教や、まだ勢いのあった仏教、ジャイナ教と競合したために、迅速には普及しなかったようだ。

13世紀からデリー・スルタン朝、16世紀からムガル帝国が北インドを支配し、1858年に英領インドに統合されるまで何世紀にも渡ってイスラム王朝が続いたが、イスラム教は「支配者の宗教」であった。

民衆の大部分はヒンドゥー教徒だったのでヒンドゥーとイスラムは共存し、インド文化とイスラム文化が融合してインドのイスラーム文化が発展した。

ムガル帝国時代に建てられたフマユーン霊廟(第2代皇帝フマユーンのお墓)やタージマハル(第5代皇帝シャー・ジャハーンが妻のために建てた総大理石のお墓)といった贅を尽くした美しい建造物の数々は世界遺産に登録され、世界中から観光客が訪れる。

イスラム教の特徴

イスラム教の特徴を、独断と偏見でピックアップ!

神様はアッラーだけ

ヒンドゥー教には何千、何億もの神様が存在するが、イスラム教では「アッラーの他に神はなし」と考えられている。

一神教であることはキリスト教やユダヤ教と共通するが、ムハンマドはあくまでも預言者という立ち位置で、崇拝の対象にはならない。

イスラム教では、人間の手で作られた像は神そのものではないということから、偶像崇拝が否定されている。そのため、アッラーやムハンマドの肖像は絶対に作られず、イスラム教の観光地はお墓が多い(タージマハルなど)。

イスラム教では、他の宗教の信者が神像を崇拝することも認めないため、イスラム教徒によって破壊されたとされるヒンドゥー教寺院の遺跡も残っている。インドの仏教寺院を破壊してインドにおける仏教衰退のとどめを刺したのもイスラム教徒であると言われている。

ワランガル・フォート
[ワランガル] カーカティーヤ朝の首都であったワランガル(ハイデラバードの近く)にはデリー・スルタン朝に破壊された「ワランガル・フォート」が破壊されたままの状態で残っている。破壊されすぎて復元不可能だそうだ。(2018年9月撮影)

タージマハル
[アーグラ] タージマハルは巨大なお墓だよ(2018年5月撮影)

毎日5回お祈りする

夜明け前、昼、午後、日没時、夜、1日5回メッカの方角に向かってお祈りすることが求められている。

お祈りの時間になるとモスクから大音量で礼拝の呼びかけ(アザーン)が大音量で流れてくるため、異教徒は大きなモスクの近辺に住まない方がいいかもしれない。

空港やショッピングモール、企業のビルや工場には「Prayer Room(礼拝場)」が設けられているので、おでかけ中や仕事中でも礼拝できる環境は整っているが、実際に毎日5回、決められた時間に礼拝をするのは簡単ではないらしい。

普段は時間通りに礼拝できない人も、「金曜礼拝」は別物。金曜礼拝とは、金曜日の正午にモスクに集まって、集団で祈りを捧げるもので、日課の礼拝とは異なる特別なものだ。

インド各地にあるJama Masjid(ジャマ・マスジッド)は、金曜礼拝をするためのモスクである。

デリーのジャマ・マスジッド
[デリー] ジャマ・マスジッド(2011年3月撮影)

ハイデラバードのジャマ・マスジッド
[ハイデラバード] ジャマ・マスジッド(2018年9月撮影)

豚肉を食べない

コーランでは、豚肉は穢れであるとして口にすることが禁じられており、流れ出る血や死肉と並んで、豚肉は穢れた忌まわしいものであると定義されている。

コーランが下された7世紀当時は、殺菌技術などが不十分であるため、豚肉を食べて亡くなった方が多くいたと想定される。また、豚は中東の乾燥した気候で飼育することに適しておらず飼育コストがかさむために、宗教でタブーとしたのではないかという説もある。

インドの場合、野良豚が道端でゴミを漁っていたり、自らの糞の上に転がって涼んでいたりするので(豚は汗腺がなく汗をかくことができない)、宗教うんぬんを抜きにして「豚は汚いから食べると健康を害する」という固定概念が刷り込まれている。そのため、イスラム教徒だけでなくヒンドゥー教徒でも豚肉NGの人は多い。

日本人からすると「こんなに美味しい豚肉を食べられないだなんてかわいそう」と思うかもしれないが、インドの豚肉は臭いがきつくあまり美味しくないと個人的には思う。鶏肉や山羊肉(マトン)を使った美味しいメニューがあるので、豚肉を食べられないことは全く問題ではない。

ゴミを漁る豚
道でゴミを漁る野良豚。綺麗なピンク色の豚は見かけたことがない(いるのかもしれないけど)。

お酒を飲まない

飲酒も禁じられているが、豚肉ほど厳格には守られていない。

ヨーロッパやトルコ、インドネシアなどでお酒を飲むイスラム教徒がいるように、インドにもお酒を飲むイスラム教徒が存在する(主に男性)。

お酒を嗜むムスリムの友人(お金持ち)によると「酔っている時にお祈りはしない」「酔いつぶれるまでは飲まない」といった独自ルールを設けて自分自身をコントロールしているから大丈夫だ、とのこと。

インドの都市部のレストランやバーには「モクテル」というノンアルコールカクテルが必ず用意されている。モヒート風、ピニャコラーダ風、マルガリータ風、テキーラサンライズ風、サングリア風・・・というようにバリエーション豊富で味も美味しいので、お酒を飲まない人でもナイトライフを楽しむことができる。

モクテルはカクテルと同じグラスで提供されるので見た目はカクテル感満載だが、中身はジュース。そのためレストランでは子供が飲んでいることもある。子供がカクテルを飲んでいるみたいでちょっとビックリする。

インドのモクテル

Wartermelon Mango Mojit(スイカマンゴーモヒート)。暑いインドにぴったりの美味しいモクテルです💕

女性の服装が保守的

コーランでは、男性が女性の美しさに負けてよからぬことをしないように、女性は美しいところは人に見せぬよう、親しい人以外には目立たないようにしなければいけないとされている。

そのため、人前に出るときには、体をすっぽりと包む長衣を着て、肌やボディーラインを見せないことが求められている。

インドでは頭をスカーフ(ヒジャブ)で頭を覆い、黒いガウン(アバヤ)で体を覆うのが一般的だが、若い女性の中には頭を覆わずに肩だしファッション、ミニスカートという恰好をする人もいるので、ここら辺は各ご家庭・個人の自由といったところ。

とはいえ、保守的に全身を隠す女性が多数を占めている。

以前、とても暑い日にヒジャブで頭を覆う友人に「暑くないの?」と無神経に聞いたことがある。

「暑いけど、外に出るときは頭(髪)を覆うのが私にとっては当たり前だし、髪をさらけだしたら土埃でギシギシになるからイヤなの」という回答に、謎に納得した私。インドの場合はこういう理由もあるらしい。

ムスリム女性の写真をあえて撮る機会がないので写真がほとんどないのだが、たまたま映り込んでいるものを発見したので参考にどうぞ。

公園で遊ぶインド人
[ジュナーガル] 公園で遊ぶインド人たち。右側の女性が典型的なムスリムファッションに身を包んでいる。(2017年3月)

下の画像の女性たちように、カラフルで可愛いセットを身に着けている方もいる。

ムスリム家族との記念写真
[マンドゥー] ムスリム家族との記念写真。ガイコクジンと写真を撮りたがるインド人は多い。(2016年8月)

ラマダーン

ラマダーン期間の1か月間、イスラム教徒は日中に飲食ができない。何も食べないだけではなく、水を飲むこともできない(子供や妊婦、病人は例外)

ラマダーン中の1日のスケジュールは、まだ外が暗い早朝に家族そろってお祈りをし、日が昇る前に朝ご飯を済ませ、日中は空腹と喉の渇きに耐え、日が暮れたら夜ご飯を食べ、夜中に祈りを捧げるというもので、毎日5回の礼拝の他に、早朝と夜中の礼拝が追加される。

早寝遅起き+日中の断食+早朝と夜に爆食い=身体的な負担が大きいのではないか?と、異教徒の私は心配になる。

特にインドは暑いので、喉の渇きは大丈夫なのか?エネルギー不足で倒れてしまわないか?と思うが、エネルギーをうまく分散して、人によっては「今日は体調がよくない」と言って水を飲んだりして、ラマダーンを過ごしている。

イスラム教徒の知人を見ていると、ラマダーンは決して辛いだけではなく、ワクワクして取り組むものにも感じられる。みんなで断食を乗り越え、ラマダーンが明けるとイスラム教最大の祭日である「イード(イスラム教のお正月的なやつ)」がやって来るので、それを楽しみに頑張っているようにも見える。

神様の数が多いヒンドゥー教はでは神様にまつわる祝祭日の数も多いが、ヒンドゥー教と比較するとイスラム教は祝祭日が圧倒的に少ない。イードを心待ちにする気持ちも分かるような気がする!

ラマダーン中に私の家の前でたむろするムスリム家族
[ムンバイ] ラマダーン期間になると、ムスリム家族が私の住むアパートの前で生活し始める。うちの近くに小さなモスクがあるから?ラマダーンが終わると彼らは消え、翌年のラマダーンにまた戻ってくる。(2019年5月)

イスラム飯が旨い

職場でビリヤニを食べていた時のこと。

私「ビリヤニは日本でも最近有名になってきたよ」

インド人同僚(キリスト教徒)「インドでも人気がでてきたよ!」

私「ん…?」

ビリヤニは、イスラム教徒がお祝い事の際に食べるお米料理なので、異教徒にとっては「ガイコク」の食べ物なのかもしれない。

インドのイスラム教を由来とする食べ物は、ビリヤニの他にも、タンドーリチキンやバターチキンカレー、キーマカレー等々、、、日本のインドカレー屋さんで提供されているものは、ほとんどがインド・イスラーム文化に由来しているんじゃないだろうか。

これらはムガル帝国の時代に生まれたもので、「中央アジアの肉食文化」+「ペルシャ料理」+「インドのスパイス」が融合して宮廷料理として発展したものだ。
ムガル帝国はアフガニスタンからやって来たイスラム王朝)

ムガル帝国は当初ヒンドゥー教との融和を図っていたので、ヒンドゥー教徒に配慮して牛肉は使わず、山羊肉(マトン)と鶏肉を使った料理が圧倒的に多い。ナッツや乳製品をふんだんに使ったリッチな味わいはそれまでのインドには存在せず(当時のインドでは食=生活の中の医療と考えられていたため)ムガル帝国下においてインドの食文化が大発展した。

ムガル料理はハイデラバードやラクナウ(アワド)でさらに独自の発展を遂げ、郷土料理としてインド人にも人気。

ガイコクジンの私たちにとっては、肉メニューが嬉しいね。

デリーのジャマ・マスジッドの周辺で提供されていたチキン・タンドゥーリ
[デリー] ジャマ・マスジッドの周辺で提供されていたチキン・タンドゥーリ(2019年9月撮影)

アワド名物Tunday Kababi
[ラクナウ] ラクナウ(アワド)名物、牛肉のひき肉を丸めたハンバーグ的な「Tunday Kababi」(2019年9月撮影)

さいごに

イスラム教徒が多い国はイスラム教徒がその国で多数派であることが一般的であるが、インドは世界で三番目に多い1.7億人のイスラム教徒を抱えるも、イスラム教は少数派である。イスラームの文化や考え方が大前提となっているアラブの国々と異なり、インドではお酒も飲めるし、豚肉も食べれるし、肌を露出する人も巨万といるので、誘惑に負ける人もいるし、ムスリムの家庭に生まれ育った人でも、コーランの内容はよくわかんねぇや、俺はゴーイングマイウェイで行くぜというゆるい人も存在する。

日本人にとってイスラム教は禁忌事項が多く窮屈に思える部分もあるが、ムスリム友人いわく「習慣と化しているから問題ない」とのこと。日本人の生活にも、習慣として当たり前に実践している宗教的なことがある。例えば食事のときに「いただきます・ごちそうさま」と感謝すること、箸を横に置くこと、これらは神道由来であり、もはや信仰云々を意識せず、当たり前にやっている。私はイスラム教徒ではないので分からないが、こういう感覚なんだろうかね?